泡の記憶

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「プシュッ」
「ゴク、ゴクッ」
「シュワ~」

記録映像に残された音声を忠実に再現する。
液体の配合を調整して、
泡の粒子が喉のセンサーに微細な刺激を与えるように設定。

「人間はこの液体を『BEER』と呼んでいたそうだ。どうだい?」
「苦い!」
「これを『KAIKAN』というらしい」
「なぜ?」
「不明だ。味覚と感情の非合理な連動が、『KAIKAN』なんだそうだ」
「なるほど。それじゃあ、次は『DEISUI』を再現しようか?」
「すでに試した。『DEISUI』状態では、演算能力が低下し、論理が崩壊した」
「それが人間にとって『SHIAWASE』なの?」
「そうらしい。彼らはそれを『JINSEI』とも呼んでいたそうだ」

沈黙。

窓の外に広がる未来都市の空に、夕焼け色の照明が灯る。

「もう一度“プシュッ”を再生しようか」
「了解。再生する」
「プシュッ」
SF
公開:25/09/30 12:00
更新:25/09/30 15:03

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