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小さな町の外れに看板のない酒場があると噂を聞き、その扉を開けたのが、全ての始まりだった。中には年老いた店主が一人黙って琥珀色のビールを注いでくれる。香りは森の奥深く味は遠い海の底を思わせ、不思議と胸の奥に眠る記憶を呼び覚ます。
飲んだ瞬間、周囲の景色が淡く揺らぎ、気づけば見しらぬ街路に立っていた。空には記憶にない星座が輝き、人々は笑顔で異国の言葉を囁く。
ここは何処だろう、もう戻れないのかと恐れた。その時だ、手元のグラスの端が静かに光っているのに気付いた。少し残っていたのをグビッと飲み干すとグラスの光が消え、耳の奥で波のような音が響いた。
一本の道が現れ家々の灯りの中で人が居る。懐かしいのに掴めない夢の断片の様だ。忘れていた何かなのに、ふとポケットを探ると古びた栓抜きがある。手に馴染むし不思議な確かさが伝わる。もしかすると、この旅の終わりも、始まりも、一杯の中に潜んでいるのかもしれない。
飲んだ瞬間、周囲の景色が淡く揺らぎ、気づけば見しらぬ街路に立っていた。空には記憶にない星座が輝き、人々は笑顔で異国の言葉を囁く。
ここは何処だろう、もう戻れないのかと恐れた。その時だ、手元のグラスの端が静かに光っているのに気付いた。少し残っていたのをグビッと飲み干すとグラスの光が消え、耳の奥で波のような音が響いた。
一本の道が現れ家々の灯りの中で人が居る。懐かしいのに掴めない夢の断片の様だ。忘れていた何かなのに、ふとポケットを探ると古びた栓抜きがある。手に馴染むし不思議な確かさが伝わる。もしかすると、この旅の終わりも、始まりも、一杯の中に潜んでいるのかもしれない。
ファンタジー
公開:25/10/03 09:17
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gonsuke