ビールの湖に落っこちた話

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 ある日の夜。ビールでできた湖に反射する三日月に腰掛けて、持ってきた大きなコップで湖のビールを掬ってゴクゴクと飲んでいたら、酔っ払って湖に落っこちた。
 僕は泳げない上に、勝手に口の中にゴクゴクと入ってくるビールのせいで、更にベロンベロンになった。
 僕はしぶといのでジタバタともがきながら、口には相変わらずビールがゴクゴクと入りながらも、必死に陸に上がろうとしていたら、気づけば湖のビールは全て空っぽになって、僕はポッカリと空いた湖の底にぽつねんと鎮座していたのだ。
 かなり深い湖だったようだ。這い上がれる自信がない。ということはそれだけの量のビールを飲み干してしまったという訳なので、これはもうどうしようもない。
 それから僕は、その小さい脳みそであれやこれやと思案しながら、ここから脱出する術を探している。
 酔いなんて、とっくのとうに冷めた。
ファンタジー
公開:25/10/02 22:34

久保田毒虫( 広島 )

ショートショートマニア兼作家兼虫。
ベリショーズ Vol.13〜14、たびぽえ第9号、夢みたものは 第5〜9号、第1〜2回引きこもり文化祭作品集、ANTHOLOGYB、物書きさんの三日日記、水平線vol.1〜2、星々vol.1〜3 等に作品掲載
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note https://note.com/dokumu444

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