金色秋水

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旅先の地ビール専門店で注文した生ビールは、正直いまひとつの味だった。
ビールもジョッキもよく冷えているし、香りや色、泡の立ち具合も美味そうなのだが、のど越しがぬるいというか、まるでキレがないのだ。

「こりゃいかん、なまくらビールになっちまってる」
店主に確認すると、あわててジョッキを下げられてしまった。
「ビール鍛冶に砥ぎに出しますんで、少々お待ちください」
たしかにキレがないとは思ったが、ビールにも鍛冶屋が存在するとは。半ば興味本位で待っていると、厨房からジョッキが台車で運ばれてきた。

「お待たせしました。キンキンに砥いでおきました」
鋼鉄製らしきジョッキの中で、黄金色に輝くビールが火花を散らしている。刀を打ち合わせるような、キンキンと甲高い音に背筋が寒くなる。
これ、飲んで平気か……?両手で掴んでよっこらせと持ち上げたとたん、スパッ!と切れ味のいい音で、ジョッキが真っ二つになった。
その他
公開:25/10/02 10:34
クラフトビールコンテスト③ 秋水:よく研ぎ澄ました刀 切れ味良すぎ(笑)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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