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グビグビ、と海が鳴る。
まだ昼前だというのにこの調子だ。当然、漁には出られない。
目の前に広がる黄金色の海は、波が引く一方で、潮位も下がりつづけていた。
グビグビ。またすぐに鳴る。
「このペースじゃ干上がっちまうな」
そんな仲間のつぶやきをかき消すように、赤らんだ水平線から「バカヤロー!」と聞こえてくる。こりゃ、相当酔ってるな。いいですよ。若いころにたくさん叫ばせてもらった分、今度はこっちが受け止めますよ。
そうしてせっかく仁王立ちしたというのに、次の瞬間、波音はスピィスピィという寝息に変わっていた。
「海がこんなじゃ、今日は中止だな」
仲間は「だな」とうなずいてから、あくまでも真剣な表情でつづける。
「……真っ昼間だけど、俺らも漁に行けないんじゃ仕方ないよな」
「ああ、仕方ない」
俺たちは顔を見合わせて笑うと、海にくるりと背を向ける。
そして、行きつけの酒場へ向かった。
まだ昼前だというのにこの調子だ。当然、漁には出られない。
目の前に広がる黄金色の海は、波が引く一方で、潮位も下がりつづけていた。
グビグビ。またすぐに鳴る。
「このペースじゃ干上がっちまうな」
そんな仲間のつぶやきをかき消すように、赤らんだ水平線から「バカヤロー!」と聞こえてくる。こりゃ、相当酔ってるな。いいですよ。若いころにたくさん叫ばせてもらった分、今度はこっちが受け止めますよ。
そうしてせっかく仁王立ちしたというのに、次の瞬間、波音はスピィスピィという寝息に変わっていた。
「海がこんなじゃ、今日は中止だな」
仲間は「だな」とうなずいてから、あくまでも真剣な表情でつづける。
「……真っ昼間だけど、俺らも漁に行けないんじゃ仕方ないよな」
「ああ、仕方ない」
俺たちは顔を見合わせて笑うと、海にくるりと背を向ける。
そして、行きつけの酒場へ向かった。
ファンタジー
公開:25/09/27 20:49
更新:25/10/04 08:37
更新:25/10/04 08:37
第20回坊っちゃん文学賞:大賞・佳作ともに受賞。
空想競技コンテスト銅メダル:『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞:『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 :『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)
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