名画でショート078『森と鳩』(マックス・エルンスト)

鋼鉄の森は、深くて暗かった。
巨大なネジが不安定な空に向かって伸び、そのネジに風に鋼鉄の枯れ草が巻きつく。
鋼鉄の木々は長年の風雨で錆が浮き上がり、もやはこの森を管理する機械文明は存在しないことを示している。
この森は、鋼鉄人たちが、ペットの鳩を飼うために作られた。もちろんペットの鳩も鋼鉄製だ。赤い鳩を飼うための、鳥かごが森の中央に置かれている。
だが、もはやかごに鋼鉄の鳥はいない。
ここがかつては鳥の住みかであったことを示す、赤い鳩の看板のみ。
今日も鋼鉄の森に暗闇が迫っている。