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 夕方の商店街で、男たちが黒いジャージを着た人に、何か因縁をつけて、小突いたり、落ちていたペットボトルで頭や顔をポンポン叩いたりしていました。
 あれは、ペットボトルがジャージの人の首の辺りに触れた時だったと思います。ジャージの人の眉がピクンと動いて、たしかこう言ったのです。
「ペットボトルで殺さない」
 すると、ペットボトルを捩じり潰すときみたいな音が辺りに響きました。叩いていた男が消えて、男の仲間の目の前にはペットボトルが立っています。不意に、仲間の男たちが叫んで逃げていきました。空っぽだったはずのペットボトルに、ジャージの人をいたぶっていた男が、ぎっちぎっちに詰まっていました。男が呼吸するたびに、鼻の穴の前のペットボトルが白く曇りました。唇をパクパクさせ、目玉は血走ってギロギロと動いていました。
 男は病院へ搬送されましたが、取り出すことができないまま、3年くらい生きていたそうです。
ホラー
公開:25/09/29 20:33

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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