お久しぶりです

船を降り、１年ぶりに故郷の地を踏む。
港を見ると人の数より猫の数の方が多い。その多くは昼寝をしているものの、私に気付いた数匹が近寄ってくる。
餌を期待しているのだろう。気の利くウェルカムキャットに持参してきたおやつを与えた。
すると他の猫達も集まってきた。囲まれる前に退散しよう。

実家に帰って来た。玄関の扉に手をかけるとすんなり開く。
不用心だなぁ…鍵くらいかけておけよ。
にゃ～。
開けっ放しの窓から猫が家に侵入しようとして、私をじっと見つめてくる。
「おや？お帰り」
振り返ると母が丁度帰って来たところだった。
「ただいま。母さん、いくらここが田舎でも鍵くらいかけておきなよ。危ないよ」
「大丈夫大丈夫。この島では他人の家に盗みに入るネズミは皆、猫に食われてしまうからね」
私達の会話を聞いてか、猫は興味を失ったかのように窓から離れる。
もしかしたらあの子、私を泥棒と間違えたのかもしれない…