お久しぶりです

病院で眠り続ける私。楽しみと言えば、夢を見るくらいしかなかった。
「久しぶり」
そう言ってきたのは獏。私にたくさんの夢を見せてくれる夢の中の親友で、ここ最近会いに来てくれなかったので不安だった。
「ようやく見つけたぜ。お前を治せる医者をな」
そう言って獏は夢ではなく、現実を私に見せてきた。
私はこのままでいい。獏と夢だけ見れたらそれでいい。わざわざ辛い現実を見る必要はない。
「そう言いなさんな。実は俺、ついに習得したんだよ。夢を形にして現実に持ち込む技を」
それは凄い！ぜひとも見てみたい！
「おう。目を覚ましたら見せてやるよ」

獏の言っていた医者のおかげで目を覚ました私。
だが、待てど暮らせど獏は現実でも夢の中でも私の前に現れない。
嘘をつかれた…とショックでふて寝する私。
その間に花瓶の中の花が今日も取り換えられる。その花が現実には存在しない花だと、この時の私はまだ気づいていなかった。