お久しぶりです

５代目の勇者の命があと僅かと聞き、私は病院へと急いだ。
「お久しぶりです。魔王様」
私を迎えたのはかつての部下。５代目の勇者と結婚し、引退した女魔族。その美しさは何一つ衰えていない。
「夫がお待ちです。どうぞ」
病室へと案内される。６代目が「お久しぶりです」と頭を下げる。
今代勇者、７代目が私に「爺ちゃんを助けて！」と縋りつく。
「やめんか！見苦しい！」
真っ白な顔で怒鳴る５代目。老いて、風前の灯火であっても勇者としての威厳は当時のままだ。
「久しぶり…お前を呼び出したのは他でもない。昔の約束、覚えているよな？」
ああ、お前が死んだあと、骨くらいは拾ってやると言ったあれだろう？
「それもだが、地獄で会おうぜ、と言った奴だ。魔王。俺が死んだら、ヘルファイヤで俺を地獄に送ってくれ。俺は地獄で、お前を待ちたいんだ…頼めるか？」
勿論だ。魔王に二言はない。
「ありがとな。地獄で待っているぜ…親友」