お久しぶりです

俺は毎年、一人でアフリカを訪れる。
一応は家族を誘ってみるも野生動物を見るだけの海外旅行に興味はないようだ。
そんな話を夜、宿泊先のテントでする。
「男のロマンって、中々伝わらないものですからね」
血の滴る肉に被りつきながら、意外と繊細な事を言う相手。そのギャップがまたたまらない。
今、俺の目の前にいるのは百獣の王・ライオンである。俺は毎年、彼に会いに来ていると言っても過言ではない。
お久しぶりです。と、宿泊先のテントを訪れてきた彼。何も知らぬ人だと卒倒してしまうに違いない。
私だって彼に「良かったら、見たい動物のいる場所教えますよ」と声をかけられた時は驚いたものだ。
「今は雄ライオンも家族を支える為に仕事をする時代なんです」だってさ。
百獣の王なんて名ばかりだと謙遜するが、王様が故の彼の視点はどのガイドよりも信用できる。
久しぶりに訪れた場所でも久しぶりに感じないのは、彼のおかげである。