お久しぶりです

女性初のアカレンジャー。その中の人に抜擢された私。子どもの頃から憧れていた役にやる気を滾らせる。
本番前、私は自身のスイッチを切り替える為に古びたアカレンジャーお面を被り、変身、と呟く。
それを見て、ジャーク将軍役の本田さんが声をかけてきた。
「それ、懐かしいね。信じられないと思うけど、そのアカレンジャー。中の人やっていたの僕なんだよ」
知っています。とは言わなかった。
だってこの作品、子役だった私のデビュー作なんですよ。
当時からヒーローになりたいだなんて言っていたものだから、女のくせに生意気だ、と現場でいじめられていた私。
そんな私に、若き日の本田さんがこのお面をくれた。私に、君はヒーローになれるよ、と言ってくれた。そのおかげで、今の私がある。
お久しぶりです。本当ならそう声をかけたい。でも言わない。言えない。
だってヒーローと女は秘密が多い方がいいと、本田さんが教えてくれたのだから。