お久しぶりです

「お久しぶりです」
その人は数年ぶりにウチの動物病院を訪れた。ケージの中には新しい猫。
どうやら前に飼っていた猫は亡くなったらしい…カルテの空白期間がその証拠だ。
新しい猫の診察を始める。
ふむ…大人しい子だ。そういえば前の猫もそうだったな。
顎の下を撫でると怒り、脇の下を揉んでやると気持ちよさそうに目を細める面白い子だった。
…この子も同じか。この子はあの猫の生まれ変わりかもしれないな。
猫の中には、毛皮を着替えて元の飼い主の所に帰ってくる子もいる。獣医をしていて、そうとしか思えない体験をした事は一度や二度ではない。非科学的と言われようともその可能性を感じてしまう。
私を見つめ、にゃっ！と短く声を上げる猫。
お久しぶりです、と言われた気がした。
生まれ変わりの可能性があるなら、前のカルテは捨てずにとっておくとしよう。
生まれ変わる前と後。その違いを探る機会が久しぶりに訪れたのだから。