金木犀の花言葉

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"――夕焼けが照らす通学路。四つ辻に残り、自転車を軽やかに進める先輩の背中を見つめる。遠く遠くまで。
 秋の風が少し肌寒い。彼女の卒業まで、あと半年"

「まぁ悪くないわね。けど秋と直接描写しなくても何か表現できないかしら」
 文芸部の部室に二人。
 学園祭で引退した先輩は、コンクールに向けた僕の作品を勝手に読み添削を始めた。

「暇なんですか?あるでしょ、受験勉強とか」
「私の成績知ってるでしょ。それより一人残された新部長が心配よ」
 この人が入学以来常にトップというのは噂ではなく、周知の事実だ。
「別に頭数は足りてるんですから廃部になったりはしませんよ」
 大半は幽霊部員だけど。
「そんなことより金木犀とかどう?私が思うに主人公は無自覚でも、仄かな恋心を抱いているんじゃない?マイナー寄りな花言葉だけど『初恋』なんてあるのよ!」

 そこまで読み解けるなら、と口に出す勇気はまだなかった。
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公開:25/09/23 09:18
更新:25/09/22 19:17

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

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