不老不死者の右腕

とある天才画家が私に腕を譲ってくれと言ってきた。
私は不老不死。この腕を切り落とし、画家にくれてやっても問題はない。私の腕はまた生えてくるからな。
画家は右腕に手を伸ばすと、それを外した。事故で利き腕を失くしたらしい。
だが自分には絵を描く事しかできないからと、私に腕を求めた。それを移植し、再び絵の世界に戻りたいそうだ。
そういう事ならと私は腕を切り落とし、画家に与えた。
そうして画家は老いる事も、朽ちる事もない右腕で絵を描き続けたそうだ。
画家亡き後も、右腕だけは残った。噂で聞いた話だが、自らの右腕を切り落とし、その右腕を移植した画家がいたそうだ。
それはまずいな…その画家が亡き後、同じように右腕を切り落とさんとする画家が現れるかもしれない。
だから私はその画家亡き後、右腕を取り返すや海へと投げ捨てた。
その右腕だが今は雌のチョウチンアンコウの腹にくっついて、海底に絵を描いているそうだ。