0
2
その人は、毎週水曜日の午後三時、必ず来る。十年前に亡くなったはずなのに。
「ねえマスター、ほんとにあの人、亡くなってるんですか?」
「ああ、十年前にね」
「十年前に亡くなったはずなのに、なんで……」
「ここはね、あの人と奥さんが毎週通ってた店なんだ。今でも、奥さんは水曜の三時にだけ来る」
ほら、来た。
二人は何も言わず、同じ席に座る。そして、ただ黙って、同じカップを傾ける。
コーヒーの湯気が、ふたつに分かれる。
「ねえマスター、ほんとにあの人、亡くなってるんですか?」
「ああ、十年前にね」
「十年前に亡くなったはずなのに、なんで……」
「ここはね、あの人と奥さんが毎週通ってた店なんだ。今でも、奥さんは水曜の三時にだけ来る」
ほら、来た。
二人は何も言わず、同じ席に座る。そして、ただ黙って、同じカップを傾ける。
コーヒーの湯気が、ふたつに分かれる。
恋愛
公開:25/09/12 21:07
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます