消える封筒

変な封筒を見つけた。中身を入れて封をすると、たちまち消えてしまう封筒だ。
不気味だが結構便利で、私はストレス発散に使い始めた。上司への愚痴をしたため、封筒に入れて消すのである。時には菓子を食べた証拠隠滅のために袋のゴミを消し、部下に渡せなかったラブレターの処分にも重宝した。

そんなある日、映画を見た。主人公は私と同じ出版社勤めで共感できた。しかし話が進んで違和感が芽生える。あまりにも共感しすぎる。特に主人公の上司は私の上司そのものだ。菓子の好みまで一緒じゃないか。そして決定的だったのは、ラブレターを送るシーン。処分したのと全く同じ内容で描かれていた。

そう、消えていたのではなく、別の場所ーあろうことか脚本家ーへ届いていたのだ。
映画は働く人々にうけて話題となった。ただし結末は部下と結ばれてハッピーエンド。なんだよ、私と違うじゃないか。だが一つ良いことに、上司はなんだか優しくなった。