お久しぶりです

彼女と釣りにやってきた。
「釣りは時間との戦いだからね」と彼女。慣れた様子で準備を整え、すぐに始める。
僕はというと釣りは久しぶり。準備に手間取り、餌に怖がり、ヒットを見逃す。
君より大物を釣ってみせると豪語したのにこのザマだ…
「腕、すっかり錆びちゃっているね」
１０匹目を釣り上げた彼女に対し、僕はボウズ。ぐぅのねも出ない…
しかも落ち込んでいたら、ガラの悪そうな男に突き飛ばされた。
「おい、姉ちゃん。釣りなんかより俺ともっと楽しい事しねぇ？」
絡まれる彼女を守るべく、僕は男の前に立ちふさがる。
「何だテメェ？怪我したくなけりゃすっこんでろ！」
凄む男。その鼻っ面に鋭いパンチを食らわせる。
「ひぃ！」
驚いて尻もちをつく男。寸止めでも効果は抜群だ。男は這う這うの体で逃げていく。
「ありがと。腕、錆びてないね」と彼女。
元ボクサーの僕。君を守る為、この腕だけは錆びつかせるわけにはいかない。