お久しぶりです

今年の夏。夏休み中に孫が車の免許を取った。
運転に慣れたいからと言って、儂の病院の送り迎えを買って出てくれた。
孫の心遣いはとても嬉しい。たとえ、本心がお駄賃目当てであったとしても、だ。

「お久しぶりです」
今日も孫が儂を迎えに来た。儂は疑う事なく車に乗り込もうとする。
「ちょっと待ったぁ！」
突如現れた孫が、車に乗ろうとする儂の手を引いた。
ん？おかしいぞ。儂には孫は一人しかいない…なんで二人もいるんだ？
「爺ちゃん！そいつ、私の偽物！」
運転席の孫を見る。その顔が、姿が見る見る内に天使へと変化する。
「ちっ！今年こそ連れて行けると思ったのに…」
悔しそうに走り去る天使。
「もう！去年も言ったけど少しでも暑いと感じたらクーラー使って！」
そう言えば去年もクーラー使わないで熱中症で倒れかけた…それもあってお迎えが見えた…
あの天使がお久しぶりですって言ったの、そういう意味か！