バケモノたちが通う喫茶店

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その喫茶店には死者と怪物がお客としてやって来る。

「友人を独り残してしまって心配だ」
「まだ私にはやるべきことがあるのに」
「あいつが許せない、どうしても」
死者はあの世へ行く途中だが、生前の未練に縛られて、安心して旅立つことができずにいた。
なので店主は彼らの心残りを全て買い取る。

「仕事がきつかった」
「家の居心地が悪くて」
「耳に入るのは不幸なニュースばかりで」
怪物たちは生きるのが辛くて、人の心も姿も捨ててしまった。
そこで店主はコーヒーに死者たちの心を淹れる。

コーヒーを口にした怪物たちは、わんわんと泣き出した。
悲しいこと辛いことに立ち向かう勇気、世の理不尽さと戦う怒り、大切な人を思いやる優しさ、そして生きる喜び。

怪物たちは失くしてしまったものを思い出した。
その他
公開:25/09/15 21:19
更新:25/09/15 21:21

まえだ しきめん

幻想好きです。

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