かき氷専門店

　近所にできた「かき氷専門店」は、とにかくメニューが豊富だ。ブルーハワイやシーグラス、スカイブルーにアクアトンネル──なんと、青系だけで百種類以上。

　定番のブルーハワイを注文し、ひと口食べる。気づけば、僕はハワイの青空の下にいた。目の前にはビーチが広がり、波が優しく寄せては返す。そこに、アロハシャツを着た店員が、「他にもいかがですか？」と声をかけてくる。

　次はアクアトンネルを注文。ひと口食べると、周りは水族館に。水槽のトンネルをくぐり、群青の魚影が頭上をよぎる。
　これはすごい。僕は夢中になって、次々と「青」を平らげた。

〈本日の青　売り切れ〉と札が出され、仕方なく店を後にする。外に出て驚いた。
　セピア色の空。景色の中に「青」がない。

　僕はすぐさまスマホを取り出した。SNS用の自撮りをぱしゃり。
　「青を食べ尽くしちゃいました」と笑うと、僕の舌は空や海のように真っ青だった。