本の虫の蜜

本の虫と呼ばれる読書家の集まりで、私達は本から集めた蜜を交換する。
本の蜜とは本のうまみ、面白いポイントを意味する。これを舐めるとその本がどう面白いのか一口で分かる。
それに本によって蜜の味は微妙に違ってくる。そこもまた面白い。
新たな味の発見を求めるもよし、自身が好きな味を突き詰めるもよし。
本の虫の集まりは、意外と毎回静かに盛り上がる。
だが、皆交換し合っているのは普通の蜜。
ローヤルゼリーと呼ばれる本の一番のうまみの詰まった蜜を交換する者はいない。
それもその筈。一番のうまみの蜜を舐めると一番面白い場所が分かってしまう。つまり、舐めるとネタバレになってしまう。だからそれを舐めたいという者もいない。
私は過去に一度だけ、ローヤルゼリーを交換した事がある。
その人とは本の趣味が合って、蜜の好みも合っていた。だからローヤルゼリーを交換し合う事でお互いを深く知れた。
その人が今の私の夫です。