あたためますか？

僕は彼女の手が羨ましい。温かくて、触れられるだけで元気が出る。
それに比べ僕の手と言えば冷たくて、触れたものを驚かせてしまう。
彼女は昔、温めると絵柄が変わるシールを集めていた。
彼女の手に包まれると姿を変えるそれは僕の目に魔法に映った。
彼女の手でできない事なんて、ないと思っていた。

彼女が放課後の教室で一人、泣いていた。
「泣きすぎて目が腫れているから、今は誰にも会いたくない」
そう言い放つ彼女の顔に僕は手を伸ばす。昔、泣いている僕を慰めてくれたみたいに彼女の頬を両手で持ち上げた。
彼女は一瞬驚くもゆっくりと目を細める。
「冷たくて気持ちいい…」
徐々に腫れが引いてく彼女の目。冷たい手でも役に立つ事があるものだ。
「ありがと。君のおかげで元気出た。手が冷たい人は心が温かいって本当なんだね」
僕の心が温かいのは彼女の手が温めてくれたからだ。
だから今度は僕が君の心を温めてもいいですか？