没灯（ぼっとう）

田舎の祖父の家。蔵の掃除をしていると古びた灯篭が出てきた。
これ、もしかして…没灯？もしそうだとしたら一体いくらになるだろう？
以前テレビで、安いものでも百万はすると言っていた。だから偽物だったとしてもちょっとドキドキする。
夜。試しに火を入れたそれを夏休みの宿題をしている息子の傍においてみる。
するとどうだ。いつもは１０分と持たない息子の集中力が１時間は持続している。
この没灯、どうやら本物のようだ。夜限定で集中力を上げるそれは平安の時代より、夜長を楽しむ貴族達が愛用した逸品。まさかそれを拝める日が来るなんて…
本物と分かった以上、売って金するのがベストだろう。
だが、「もっと良い使い方があるよ」と、祖母。その答えは翌朝分かった。
眠りの浅い私。いつも夜中に寝て起きて寝て起きてを繰り返していたが、昨夜はぐっすり眠れた。
どうやら祖母が、睡眠に没頭できるよう、没灯に火を入れてくれたようだ。