金魚釣り

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夏祭りの夜、屋台をひと通り巡ると、私の両手はふさがってしまった。かき氷に焼きそば、チョコバナナまで抱えて、もうパンパンだ。そんなとき、友人が金魚すくいをやろうと言い出す。

「一匹くらいなら飼えるでしょ?」と勧められ、断れずに参加。結果は意外にも好成績で、私は三匹の金魚をゲットしてしまった。店のおじさんが「おまけだよ」とさらに袋を差し出してくる。

「えっ、そんなに?」と戸惑う私に、友人は笑いながら「かわいいから全部もらっちゃいなよ!」と背中を押す。だが、私は去年の記憶を思い出した。数日で世話を怠り、金魚を全滅させてしまったのだ。胸にちくりと罪悪感が走る。

結局、袋を受け取りかけて、手を引っ込めた。
「……それなら、いらないです」

おじさんは一瞬きょとんとしたが、すぐに苦笑い。私は軽く頭を下げ、せめて今年の夏は、命に対して無責任な選択はしないと心に決めた。
青春
公開:25/09/05 16:25

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