朝のシルエット

深呼吸しながら坂の上から眺める光景は素晴らしい。朝焼けの空にビルや建物のスカイラインがくっきりと浮き出て、どこかから静かな音楽が流れてくるようだ。ビル群のシルエットに向かってゆるゆると坂を下りる。十分あまり歩くと公園を過ぎて商店街。まだ閉まっている店々の前を駅へと向かう。駅にはぞろぞろと人が集まってくる。人の流れに沿って改札を抜ける。階段を上って下りてホームへ。グレーのホームにはグレーのスーツ姿が何人も。私もグレーだ。電車がやってくる。ドアを入る。早朝のこの時間にはゆったりと座席に座れてありがたい。向かい側の車窓には日除けのブラインド。駅員の気遣いか。ブラインドにあたる朝日が駅近くの建物を映す。建物のシルエットが次々に流れてゆく。通勤時間は長い、ゆっくりと眠って行こう。いつものように。

「患者さん、熟睡しましたね」
「夜中からずっと起きているの。でもこの映像を見せたら昼まで爆睡よ」