あたためますか？

俺のご先祖様は江戸時代、火付け盗賊改め方って役職についていてな、爺さんからはよくその話を聞かされていた。
元々その火付け盗賊改め方って奴は市井の人達から怖がられていた。
犯罪を取り締まる組織ではあったが、疑わしいと思えば武士や僧侶でさえ容赦なく捕まえるような連中だった。苛烈な取り締まりによる冤罪なんかも多かったと聞く。好かれる理由がない。
そんなイメージを変えたのが長谷川宣以って人だ。平蔵さんって言った方が分かりやすいか。鬼平犯科帳の主人公のモデルになった人だ。
平蔵さんがこれまでの怖い組織のイメージを刷新してくれたおかげで町方で人気が出て、ドラマで見る長谷川平蔵のイメージが出来上がったってわけだ。
勿論、この話には多少の脚色はある。俺もつい、話を盛ってしまった。
史実ってのはそのまま伝えると味気ないものだからな…だからあんたも、この話を誰かにする時はあたためたネタを盛り込んだ方がいいぜ。