夜間歩行

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夜、誰にも気づかれず二本足で歩くねこ

ああ、これが本物の、と感心してしまうほどのねこ背

ふと足を止め、地面を見つめ、ときおり空を眺め

駅前を歩く、駅員にも、タクシーの運転手にも、酔っぱらいにも、二本足で歩くねこは気づかれない

コンビニの前、若者たちの横を抜け、静かな商店街でたたずむ

公園のベンチ、二本足で立ち、月を眺め、雲の流れを追って

夜に吹く風が、ねこにとっては、こわくてたまらない

目に見えない風が木々をゆらす、それがこわくてたまらない

悪い魔法つかいが木々をゆらしているのなら、まだ気持ちが安らぐだろうか

安らぐことはないだろう、悪い魔法つかいなのだから

それにしてもこわくてたまらない

ねこは、風のないほうへと二本足で歩いていく

明日の夜もねこは二本足で歩く

そして誰にも気づかれない

そのとき、目に見えない風は、吹いているだろうか










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その他
公開:25/08/29 17:47

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