通勤

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夜明け前、唯一の友の犬を連れ毎日通う通勤電車駅へ向かった。眠い目で見上げると、空に星と月と太陽が同時に浮かんでいた。まるで世界の仕組みが狂ったかのように、淡い光と強い光が重なり合っていたが、私の街は濁った色のままだ。
今日も長い一日になりそうだな、誰にともなくつぶやくと、犬がこちらを見上げて鳴いた。
通勤なんて止めてしまえ。
驚いて足を止めた。犬が喋った? しかし周囲の人々は気づかずひたすら、ただ改札へと急いでいく。
ほら、見なよと犬が鼻先で空を指す。そこには三つの光が渦を巻きながら回転していた。まるで電車のダイヤを組み替えるかのように少しずつずれていく。
次の瞬間、駅に停まっていた電車が忽然と消えた。改札入口の前に光の道が現れ、犬は一心に駆けだした、私も後を追った。
足元が宙に浮いている、通勤の憂鬱も遠ざかり、星と月と太陽に導かれるように、私は犬と共に新しい街へと通勤することになった。
ファンタジー
公開:25/08/29 10:15

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