名画でショート074『絞首台の上のカササギ』(ピーテル・ブリューゲル)

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古来より、カササギは不吉な鳥と扱われていた。
自警団によって山に追い立てられた農民は、絞首台の上にいるカササギを見て、恐怖を覚えた。
ほんのわずかなできごころ。貧しさゆえの生きるための窃盗。この貧しさに追い込んだのは、領主や教会の厳しい取り立てが原因ではないか。全ては社会が悪い。この世が悪い。
捕まってわめきたる農民に、村人たちは順番に諭す。
「みんな、条件は同じなんだよ。同じ時代、同じ社会に生きているんだ」
「社会が悪いからあの貧しい老婆からパンを奪っていいなんて、冗談もほどほどにしろ」
「おまえの命は大事で、あの老婆の命はくそくらえってか。お前は人間のクズだ」
「君と僕とを分けたのはなんだと思う? 誠実か誠実ではないかだ」
絞首台の上のカササギは、ひときわ大きな声で、鳴いた。
農民の命は、あと少し。
その他
公開:25/08/28 22:07

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