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一頭の巨大なクジラが座礁した
今にも星が落ちてきそうな夜だった
クジラは年老いており
身をよじって海に戻る力どころか
もはや瞬きをするのが精いっぱい
天高く上る月に照らされた体には
細かな傷がいくつも煌いている
やがて小さな蟹の姿をした神が
クジラの傍へとやってきた
「あなたは多くの子をなし
幾多の海を旅しました
しかしその最後が地上では
さぞ苦しいはず
海へと送り返してあげましょう」
それを聞いたクジラは
少し間をおいてから呟いた
「いいえ、これで良いのです
私はもう泳ぐことに疲れました
誰よりも大きく生まれたからこそ
私を抱いてくれるものはいません
ここが私のゆりかごです」
そう言うとクジラは
ゆっくり目を閉じた
これまでの旅や
家族のことを思い返し
深い深い眠りに落ちる
宙の記憶が映る毛布が
朝になるまでクジラの身体を
優しく包み込んでいた
今にも星が落ちてきそうな夜だった
クジラは年老いており
身をよじって海に戻る力どころか
もはや瞬きをするのが精いっぱい
天高く上る月に照らされた体には
細かな傷がいくつも煌いている
やがて小さな蟹の姿をした神が
クジラの傍へとやってきた
「あなたは多くの子をなし
幾多の海を旅しました
しかしその最後が地上では
さぞ苦しいはず
海へと送り返してあげましょう」
それを聞いたクジラは
少し間をおいてから呟いた
「いいえ、これで良いのです
私はもう泳ぐことに疲れました
誰よりも大きく生まれたからこそ
私を抱いてくれるものはいません
ここが私のゆりかごです」
そう言うとクジラは
ゆっくり目を閉じた
これまでの旅や
家族のことを思い返し
深い深い眠りに落ちる
宙の記憶が映る毛布が
朝になるまでクジラの身体を
優しく包み込んでいた
その他
公開:25/09/01 17:47
ふと思いついた作品を投稿していきます。おそらく頻度は遅めです…
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