人生木馬

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 新時代のアトラクションとして開発された人生木馬に、試乗することとなった。
 一見すると遊園地にあるメリーゴーランドと同じだ。ひときわ目立つ白馬の背にまたがると、係員に体をベルトでしっかりと固定された。
「えらく厳重ですね」
「時空を超えて回転するので、しっかりと固定しないと」

 音楽が鳴りスタート。
 木馬が回り、周囲の風景が歪んだかと思うと、俺が幼い頃過ごしたなつかしい町並みが見える。同時に俺の体も小さくなっていた。この木馬に乗ると幼い頃からの人生を、もう一度体験できるようだ。

 過去から現在へと風景が移り変わる。俺の体も成長していき、現在に近づいてきた。しかし木馬は速度を緩めず回り続ける。

 周囲から声が聞こえてきた。
「まずい。止まらないぞ」
「プログラムにバグがあったようだ」

 次第に年老いていくのが分かる。

 まさか木馬の背中で生涯を終えるとは思わなかった。
SF
公開:25/08/24 07:53

ナラネコ

老後の楽しみに、短いものを時々書いています。

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