あたためますか？

「あたためますか？」
縁側で昼寝をしているとどこからともなく声が聞こえてきた。
「あなたの中に猫又の核が生まれました。これをあたためると、あなたは猫又になれます」
成程、そういう事か。私ももう２０歳。猫で言えばかなり長生きしたほうだ。
そうかそうか。猫又になれるのか、私は。
…でもね、遠慮しておくよ。私は猫のまま、ご主人様と一緒にいたいのでね。
私は生まれてからずっと、ご主人様の傍にいた。ご主人様に看取ってもらうのが、私の希望だ。間違っても、看取る側にはなりたくない。
だから悪いね。魅力的な提案だが、遠慮しておくよ。
「そうですか。ですが、気が変わったのならいつでもどうぞ」
声が聞こえなくなった。代わりにご主人様の足音が聞こえる。
私はゆったりと起き上がると大きなあくびをして、体を伸ばす。
ご主人様がテレビの前に座ったのを見て、その膝の上に乗った。
ここをあたためるのが、私の役目なのでね。