名画でショート073『甲冑姿のカルロス2世』(アン・カレーニョ・デ・ミランダ)

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高貴なる青い血の終焉は、早くから予感されていた。
4世代にも渡る極端な近親婚による奇形と異常。
唯一の王位継承者であったカルロス2世は病弱で、知能も低く、生きていることだけが仕事だった。
画家はカルロス2世の肖像画を依頼され、困惑した。美化するにも限界がある。
画家はカルロス2世に壮麗な甲冑を身にまとわせた。彼には甲冑を身に着けるだけの体力がなかったので、代役に甲冑を着せたて顔だけ差し替えた。
表情についても、少しでも血色をよく見せるために口紅をつけ、顔をふくよかにするために髪の毛も女性のように横に広げさせた。
真実の偽りの境界線。中世の画像処理。肖像画にも関わらず、画家は精一杯の想像力を働かせて、国王として正しい姿をした人物を作りあげた。
これほど困難な仕事はあっただろうか。
カルロス2世の死によって、スペイン・ハプスブルク家は滅亡する。
その他
公開:25/08/23 06:46

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