VRボクシング

「ストレス発散にはVRボクシングが最適だよ」
会社の先輩がボクシングジムに連れてきてくれた。
運動が苦手な私。ボクシング？痛いのも疲れるのも御免だ。
難色を示す私だが「まあまあ、一度やってみてよ」とコードのついたヘッドギアとグローブを装着させられる。
リングに上がると、ヘッドギアの画面に対戦相手が現れた。
その顔は、今日私に嫌味を言ってきた部長のもの。
それを見て体が勝手に動く。不格好だけど、何度もパンチを繰り出しては部長の顔をしたそれを殴りつける。
『KO！』
その表示が出た瞬間、心地よい疲労感に包まれる。
「どうだった？」と先輩。
「最高でした！」と即答する私。
なお、対戦の模様はモニターで確認できるらしく、先輩は私が部長をボコボコにするところをしっかり見ていた。
次に先輩がリングに上がる。
先輩は何と戦うのだろう？対戦相手の顔を見る。
そこに人の顔はなく、”残業”と書かれてあった。