濡れたアスファルト

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日が暮れる。ようやく暗くなる。車の灯が濡れたアスファルトに反射する。車の流れの前に立つ人がいる。中年の男性。勤め帰りか。その横になんとなく立ってみた。コンビニはまだ先だし、急ぐことはない。車の流れの波打ち際で立ち止まって濡れたアスファルトの灯を眺める、この人は何をみているのだろうか。
車が次々に過ぎる。みているうちに車が遅くなっているような気がした。排気ガスも増えている。街灯も暗くなる。よくみると車の形が古い。十年か二十年昔の車が走っている。ああ、もっと古い。オート三輪まで走る。川を遡るようにどんどん昔の車。周りもビルが低く、木造の建物。気がつくと立っていた男性の姿がない。
そうだ、思い出した。こんなふうに誰か友だちと並んで道ばたで道をみていたことがあった。知らないうちに友だちは帰ってしまって、一人になって道で立って道をみていたことが。子どものころ、あれも晩い夏、雨あがりの夕方だったか。
その他
公開:25/08/19 16:53

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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