本は読者を選ぶ

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私は夜眠る前に読書する。今夜も読もうと本を開いたのだが、どのページも空白とひらがなばかり、内容がさっぱり分からない。昨夜読んでいたのは、この辺りだったんだが、とにかく最初に戻ってみよう。
登場人物の名がでていた、そうそうこの名だ。今夜読むのは彼が去った所からだ、やっぱりこのあたりだ。
戻ると本の中に私のイメージ通りの男が私を睨んで立っている。

男が俺はお前に読まれたくないのだと声を出した。俺を生み出してくれた作者は三日三晩寝ずに考え、俺を良い男に作り上げてくれた。そんな作者を俺は気に入っているのに、お前は何だ、俺を崇高な人物にしている漢字を難しいからと読まずに飛ばし、昨夜は本を開くや否やイビキを掻いて寝てしまい、本を床に落としたな。お前にこの本を読む資格はないのだ。

私は男に詫て、続きを読ませて貰えるよう願いながら両手を合わせて本を閉じた。
静かになった、開くと元の本に戻っていた。
ファンタジー
公開:25/08/19 10:12

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