卵
4
5
自由研究を終わらせようと、息子を連れて化石の発掘体験に行ってみた。
8月の太陽が照りつける中、目眩を覚えながら数時間掘ってみたが、それらしい物は何も見つからない。収穫なしかと諦めかけた時、息子のハンマーが何かを捉えた。
掘り出してみると、それは卵のようだった。鶏のより二回り程大きく、見た目以上にずっしりと重い。
興奮した息子に呼ばれてやってきた専門家は、それを見るなり眉を下げた。
「ああ、これは卵ですね。化石に交じって埋まってるんですよ」
「何の卵? 温めたらかえるの?」
息子は目を輝かせてたたみかける。
「さあ、医者か画家か作家か…。何の卵かは、温めてみないと分かりません。温めても、無事にふ化するのは一握り。しかも医者の卵ならいいですが、芸術家の卵なら、生きのびる保証もありません。それでも温めますか?」
息子と私は、顔を見合わせた。
8月の太陽が照りつける中、目眩を覚えながら数時間掘ってみたが、それらしい物は何も見つからない。収穫なしかと諦めかけた時、息子のハンマーが何かを捉えた。
掘り出してみると、それは卵のようだった。鶏のより二回り程大きく、見た目以上にずっしりと重い。
興奮した息子に呼ばれてやってきた専門家は、それを見るなり眉を下げた。
「ああ、これは卵ですね。化石に交じって埋まってるんですよ」
「何の卵? 温めたらかえるの?」
息子は目を輝かせてたたみかける。
「さあ、医者か画家か作家か…。何の卵かは、温めてみないと分かりません。温めても、無事にふ化するのは一握り。しかも医者の卵ならいいですが、芸術家の卵なら、生きのびる保証もありません。それでも温めますか?」
息子と私は、顔を見合わせた。
公開:25/08/18 22:09
読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!
2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる
発表し合える環境に感謝します。
ログインするとコメントを投稿できます