0
1

傲慢であった。
私は知識が齎す豊かさや嫋やかさを、てんでこの身に堕とせずにいた。
口惜しそうに、憎々しく私を見る対になったビイドロ達は、全て羨望に起因すると、浅ましくも愉悦に浸ってすらいたのであった。

冬が過ぎゆき、春が香り落ちた。

桜が雪のようにはらはらと散り落ちる。

どこか似ている。
踏まれたら惨めたらしくなる所。
ただ違うのは、雪は恥じて溶け入るが、桜は行き場をなくしてどんどん荒んでいくというところである。

かつて皆々から慕われた私は、今や一瞥もされることなく踏まれ揉まれ、泥にまみれ、遂には世の中の道理を汚している。
雨におしやられても、ひしとしがみついて離れることはなく。

私はとうとう雪にはなれなかった。

その身に張り付いた華やかさを引き剥がし、その往く果てを知り尽くしやっと、己の蒼さを知るに至る。

春が過ぎゆき、綿雪が舞う。
公開:25/08/16 11:59
短編小説

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容