雲泥兄弟
0
1
泥の中に住む兄が居た。
雲の中に住む弟が居た。
兄は弟を愛していた。
弟は兄を疎んでいた。
「弟よ、なぜ君は私をそこまで酷く嫌うのか」
「何故って、兄さん。貴方が泥なんて汚い所に住んでいるからです」
空と地面、遠い距離を行き交う二人の会話は、風に乗って遠くまで聞こえていた。あまりに遠くまで届き、遂には山向こうの神様の耳に入った。
神様は兄の方を哀れに思い、一つ雨を降らせてみる事にした。
弟の大きな雲は、無数の小さな小さな雨粒へと代わり、瞬く間に地面へと降り注ぎ、地面を汚く湿った泥へと変えた。
泥の中で暫し兄弟は顔を合わせていたが、今度は兄の泥が気に代わり、瞬く間に空へと昇って雲へと変わった。
兄は弟を見下ろした。
弟は兄を見上げた。
しかし、兄は決して弟を見下したり、悪く言ったりはしなかった。雲と泥の間に大きな差は無く、またすぐに雲は雨となり、泥は雲となる事を知っていたからである。
雲の中に住む弟が居た。
兄は弟を愛していた。
弟は兄を疎んでいた。
「弟よ、なぜ君は私をそこまで酷く嫌うのか」
「何故って、兄さん。貴方が泥なんて汚い所に住んでいるからです」
空と地面、遠い距離を行き交う二人の会話は、風に乗って遠くまで聞こえていた。あまりに遠くまで届き、遂には山向こうの神様の耳に入った。
神様は兄の方を哀れに思い、一つ雨を降らせてみる事にした。
弟の大きな雲は、無数の小さな小さな雨粒へと代わり、瞬く間に地面へと降り注ぎ、地面を汚く湿った泥へと変えた。
泥の中で暫し兄弟は顔を合わせていたが、今度は兄の泥が気に代わり、瞬く間に空へと昇って雲へと変わった。
兄は弟を見下ろした。
弟は兄を見上げた。
しかし、兄は決して弟を見下したり、悪く言ったりはしなかった。雲と泥の間に大きな差は無く、またすぐに雲は雨となり、泥は雲となる事を知っていたからである。
公開:25/08/14 19:52
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます