名画でショート072『構成 白い十字架』(ヴォルス)

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創造主である神様は、すでに人間たちを見捨てたに違いない。もはや、十字架には何の期待も持てなかった。
闇夜に現れる爆撃機。悪魔は雨あられと焼夷弾をバラまき、街は瓦礫と燃えカスと焼死体で埋め尽くされる。
市街地はすでに燃えつくされたが、郊外では多少の炎が残っている。散らかったゴミのような残り火も、じきに消えるだろう。もちろん消火活動の成果ではなく、燃やすべきものを燃やし尽くしたからだ。
市民たちは、延焼を防ぐため、消火帯として広い十字路を整備していた。だが、焼夷弾の雨には何の効果もなかった。
街の全てが黒く染まる。
高台から廃墟となった街をのぞくと、十字路だけが白かった。まるで、心が折れた十字架のように。
その他
公開:25/08/14 10:47

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