雨あがり

会議室から言い負けて出てきた。
私の提案に代案はなくそれで決まりそうなときだった。奴のせいだ。大阪支社のＡ課長が会議室に入ってきた。新幹線が遅れたと汗を拭き拭き座るなり彼はまくし立てた。早口の大阪弁でよくわからないが、私の提案の批判だ。これこれが問題だと細部をあげつらう。私が細部の間違いを指摘すると彼はその十倍ほども反対意見を打ち上げる。ささいなことで意見の応酬。私は前のめりで方針を変えない。Ａ課長はそこをまた突く。私は守勢に転じ、ついに支社の人にはわからないと言ってしまった。禁句だ。各支社の人が集まる会議の流れは提案否決に傾いた。あっという間に幕が降りた。

ビルを出てぶらぶらした。一ヶ月の努力が水の泡だ。会議テーブルはさっさと片づけられただろう。オフィス街の雨はあがり、行き交う人の声が新鮮にひびく。タクシー乗り場でタクシーに乗り込む彼の後ろ姿が見えた。急いで新幹線で大阪に帰るのだろう。