旧交
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「温めますか?」
コンビニのレジで聞かれ、深く考えずに『お願いします』と答えた。真夜中の仕事帰り、俺以外に客の姿はない。こみ上げるあくびを噛み殺しながら、温め終わりをぼんやり待つ。
「よう、今帰り?」
懐かしい声に呼ばれ、振り返る。
学生時代の旧友が、缶ビール入りのレジ袋をかかげて笑った。
『久しぶり』と呼びかけ、名前が出て来ない事に苛立ちが湧く。最後に会ったのはいつだっけ。連日の残業に休日出勤も重なり、脳みそまで疲れ果てている。
「お前も仕事?遅くまで大変だな」
「ちょっとお盆の集まりで。あ、レジ呼んでるぞ」
ささくれた気持ちを見透かした様に前を指され、レジに向き直る。
「これ以上無理すんな。お前はまだ間に合う」
生ぬるい風が肩を過ぎた。
――ああそうだ。去年、葬式の遺影で見た。
めまいと涙でかすむ視界に、店員に握らされた缶ビールが映る。
「お待たせしました。旧交、確かに温めました」
コンビニのレジで聞かれ、深く考えずに『お願いします』と答えた。真夜中の仕事帰り、俺以外に客の姿はない。こみ上げるあくびを噛み殺しながら、温め終わりをぼんやり待つ。
「よう、今帰り?」
懐かしい声に呼ばれ、振り返る。
学生時代の旧友が、缶ビール入りのレジ袋をかかげて笑った。
『久しぶり』と呼びかけ、名前が出て来ない事に苛立ちが湧く。最後に会ったのはいつだっけ。連日の残業に休日出勤も重なり、脳みそまで疲れ果てている。
「お前も仕事?遅くまで大変だな」
「ちょっとお盆の集まりで。あ、レジ呼んでるぞ」
ささくれた気持ちを見透かした様に前を指され、レジに向き直る。
「これ以上無理すんな。お前はまだ間に合う」
生ぬるい風が肩を過ぎた。
――ああそうだ。去年、葬式の遺影で見た。
めまいと涙でかすむ視界に、店員に握らされた缶ビールが映る。
「お待たせしました。旧交、確かに温めました」
ホラー
公開:25/08/18 14:05
ラジオ『月の音色』
月の文学館
テーマ:あたためますか?
朗読採用いただきました♪
皆様もご自愛くださいね。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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