獲物
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一台の霊柩車が、夕暮れの道を走っていた。細い路地から、太い路地へと出た瞬間、霊柩車の屋根が、ベコンとへこんだ。運転手が慌てて窓から身を乗り出し、見上げると、一匹の巨大なネコが、そのすさまじいような前足で、霊柩車をしっかと押さえ込んでいた。運転手が這う這うの体で霊柩車から転がり出ると、ネコはぐーっと背を曲げ、口に霊柩車をくわえ、持ち上げ、そのまま、のしのしと立ち去っていった。運転手は、霊柩車に載っていた遺体の男が、生前、殺鼠剤の製造メーカーに勤めていたことをぼんやり思い出していた。
ホラー
公開:25/08/08 17:45
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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