決め手
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ある朝、洗面所の鏡を見たら、脳天から一本、髪の毛が飛び出ていた。寝ぐせだろうと思い、抜こうと引っ張ったら、頭が突っ張る感覚が伝わってきた。よく見ると、髪の毛に見えたそれは、一本の糸だった。それで俺は、自分がぬいぐるみの類なのだと知った。数年後、俺はある女と結婚した。女は美人でもなく、性格が良いわけでもなく、金持ちでもなかった。ただ、その女は、糸切り歯がものすごく美しかったのだ。
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公開:25/08/11 18:08
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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