まっすぐな高架下

天井が高くてまっすぐにあかるいコンクリートの通路は新しく整えられた高架下である。両側に居酒屋ラーメン店食堂土産物屋など新しい店が並び、改装された高架下を午前中のこの時間に歩く人は他にはみえない。高い天井のそのはるか上を走る列車の音が微かに聞こえるが確かではない。かつかつと自らの靴音が高くひびくだけである。
店はどれもまだ開店前で開店準備をする店員の姿もガラス越しの店内にはポツリともみえない。歩く通路に後ろからも靴音がひびいてくる気がしたがそんなはずはない。しいんとした通路に他人がいるわけはないと変な確信をもって振り向いたけれどやはり通路の後方にまっすぐ消失点まで一人もいない。
前を向いて歩き出すとまた靴音がひびく。かつかつかとすぐ後ろから聞こえる。夏の夜ならいかにも怖い話だが、早朝の都会の真ん中のコンクリート通路に怪談話は似合わない。振り向くのをためらいつつ歩いた。改装された高架下は長い。