天候神の隠居

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 隠居を決めた天候神が、自身の骨を埋めるにふさわしい地を求めて世界中を飛び回っていた。

 今回神が訪れたのは日本であった。四季の様相の移ろいが顕著にも関わらず、一年を通して過ごしやすく、豊かな山河に溢れている。神はそんな自分の理想どおりの地があるのかと驚き、慌てて旅支度をした。

 神は期待を胸に秘め、不動産屋の扉を開けた。不動産屋は神の条件や要望などを事細かく聞いたあと、しばらくパソコンのキーボードをかたかた叩いたり、分厚いファイルをペラペラとめくっていたが、やがて口を開いた。

「いやぁ大変申し訳ないんですが、今の日本で天候神様のおっしゃるような生活は実現できないんじゃないかなぁ」

「えっ、それは条件に適うとこに空きがないとかですか?」

「はい、そうなんです。ずうっと灼熱の日々が続くと思ったら、ある日途端に極寒の地に早替わりするんです。今の日本には、どこにも秋が存在しないのです」
ファンタジー
公開:26/01/27 11:08

ウルス・ミシカ

小説を書く熊です。
 

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