供物を置く者

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城壁の外れに、名もなき掲示板があった。
風に晒され、角のめくれた板。
この国では、それを名を持たないものの恩寵と呼んでいる。

勇者でも商人でもない者たちが、
名も告げず、紙片を打ち付けていく場所だ。

彼は毎夜そこに立つ。
マントも紋章もなく、革袋から一枚の羊皮紙を取り出すだけの男。

魔法も剣も扱えたが、
彼が削っていたのは言葉だった。
期待や評価を削ぎ落とし、残ったものだけを残す。

掲示板に留めた瞬間、それは彼のものではなくなる。
称号も報酬もない。
ただ、誰かが立ち止まるかもしれない余白だけが残る。

彼は振り返らず、次の夜へ歩き出す。
ファンタジー
公開:26/01/16 19:19

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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