中心蔵

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映画館に入り、時代劇の忠臣蔵を観るつもりで席に着いた。だが暗転後、スクーリンに現れたタイトルは中心蔵。
妙だなと思う間もなく、城全体の俯瞰図が流れ、その中央に不自然なほど目立つ一棟の蔵が映し出された。
私は内容が少し違うなと小さく呟いた途端、その蔵の扉が開き、白い光が溢れて私を中に吸い込んだ。
蔵の中は静まり返り、古びた人形、表紙の擦り切れた書物、汚れた着物等が置かれていた。
人形が口を動かした。私は持ち主の秘密を知り過ぎ口にした途端、ここに封じ込められたと告げた。
書物は頁を震わせ、彼が教えた策を他人に知られたく無かった男に閉じ込められたと。
着物は湿った声で、自分を纏って悪事をした人物名を語った。
私は余計な世界を覗いてしまったのだと後悔し、何も見聞きしなかった事にして蔵を出た。
蔵には鍵を掛けた後、何度も深呼吸した。
いつの間にか私は座席に居た。映像は雪の降りしきる江戸の街であった。
ファンタジー
公開:26/01/18 10:44

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