低空補助具

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少しだけ、地面から距離を取れたら。
判断を先送りできたら。
そう思う人は、少なくない。

そのための装置がある。《低空補助具》。
装着すると体は静かに浮く。
進行方向はなく、高さだけが調整される。

利点は多い。
混雑を避けられる。衝突しない。
視線が合わない。
少し上にいるだけで、会話は穏やかになる。
説明は簡潔だ。
「目的地は設定しないでください」
「高度は周囲との関係で決まります」
「安全のため、長時間の使用は推奨されません」

町では、低空で浮く人が珍しくなくなった。
利用者数は掲示板の隅で更新されている。

声は届くが、反論は届かない。

子どもは見上げ、同じ高さで風が止まるのを感じた。
大人は、それを配慮だと理解する。

掲示板の端に、新しい文言が追加されていた。

常用者は、着地理由の申告を省略できます

その日、空には何人か浮いていた。
誰も、降りる理由を持っていなかった。
ファンタジー
公開:26/01/20 07:00

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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